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2026.9.28

DX・AI活用

介護事業所のペーパーレス化は何から始める?|紙をやめる4つの段階とファイル名の付け方

「紙で保管しておかないと、なんか不安…」

「データでもらった書類なのに、つい印刷してファイルに綴じてしまう」

「パソコンに保存したはずの書類が、どこにいったか分からない」

管理者として紙を減らしたいと思っていても、こんな場面が続くと、やっぱり紙のほうが安心だと感じてしまいますよね。

私は2023年8月に独立してから、仕事の書類をほぼすべてデータにして、Googleドライブで管理しています。コンサルで関わっている事業所でも、紙をやめるお手伝いをしてきました。その中で分かったのは、紙をやめられない理由は、道具ではなく「パソコンの中で書類が迷子になること」だということです。

この記事では、迷子にならないための最低限のやり方と、どの紙からやめればいいかの順番、そしてファイル名の付け方を紹介します。

この記事でできるようになること

  • ダウンロードした書類がどこに入ったか分かるようになる
  • 事業所の紙をやめやすい順に並べて、どこから始めるか決められる
  • あとで検索で見つかるファイル名を付けられる

「紙のほうが安心」なのは、パソコンの中で書類が迷子になるから

紙のほうが安心だと感じるのは、パソコンの中に入れた書類を簡単に見つけられないからです。

事業所の種類や人数に関係なく、ほとんどの事業所がWindowsのパソコンを使っています。ところが、エクスプローラー(パソコンの中のファイルを見る画面)の見方が分からない。ダウンロードしたファイルがどこに入ったのかも分からない。その結果、多くの事業所で、パソコンのデスクトップ(最初に出てくる画面)にファイルやフォルダがびっしり並んでいます。

ファイルやフォルダがばらばらに並んだパソコンのデスクトップ画面の例

見覚えのある光景ではないでしょうか。

紙なら、手に取ればすぐに中身を確かめられます。だから、分厚く綴じられるファイルをいくつも使って管理し、年度が終われば「〇年度分」として紐で綴じて倉庫にしまう。パソコンの中で書類を見失った経験があれば、紙のまま、目に見える形で保管・管理したくなるのは当然のことです。

つまり、紙をやめる前にやることがあります。それは、パソコンの中で書類を迷子にさせないことです。

書類を迷子にさせないために、まず覚えてほしい3つ

支援先の事業所で、私が最初に伝えているのは次の3つです。ふだんはMacを使っていますが、ケアプランデータ連携システムを入れたWindowsのパソコンもありますし、以前はWindowsで仕事をしていました。ここではWindowsで説明します(画面は2026年9月時点のものです)。

1. ダウンロードした書類は「ダウンロード」フォルダに入る

インターネットからダウンロードした書類は、とくに設定を変えていなければ、パソコンの中の「ダウンロード」という名前のフォルダに入ります。見失ったときは、ChromeやEdgeの画面の右上に出る下向きの矢印(↓)のマークを押すと、ダウンロードした書類の一覧が出て、そこから入っている場所を開けます。

画面右上の↓マークからダウンロードの一覧を開き、フォルダのマークを押すとダウンロードフォルダが開く流れの例

2. デスクトップに置かず、決めたフォルダに移す

ダウンロードした書類は、そのままにしたり、デスクトップに置いたりせず、事業所で決めた1つのフォルダ(またはGoogleドライブ)に移してください。置く場所が1つなら、探す場所も1つで済みます。

3. 分からなくなったら、ChatGPTに画面の言葉のまま聞く

「ダウンロードしたPDFがどこにあるか分からない。Windowsのパソコンで、Chromeを使っている」。ChatGPTにこう打ち込めば、探し方を順番に教えてくれます。人に聞くのが気恥ずかしいことほど、AIに聞くと気が楽です。

スクリーンショット(画面の写真)を使える方は、困っている画面をそのままChatGPTに見せると、もっと早く分かります。無料のChatGPTでも使えます(2026年9月時点)。

画面を写して、ChatGPTに聞く手順
1. 困っている画面を開いたまま、キーボードの「Windowsキー」「Shift」「S」を同時に押す
2. 画面が少し暗くなったら、写したいところをマウスで囲む(これで画面の写真が一時的に覚えられます)
3. ChatGPTの入力欄をクリックして、「Ctrl」と「V」を同時に押す(写真が貼り付きます)
4. 「この画面で、さっきダウンロードしたPDFはどこに保存されていますか」と打って送る

画面の写真を貼って「ダウンロードしたPDFはどこ?」とAIに聞き、保存場所を教えてもらう画面の例

利用者の名前が写っている画面は、貼らないでください。また、無料のChatGPTは写真を送れる回数に上限があり、上限に来ると、いつからまた送れるかが画面に出ます。

エクスプローラーの見方は、別の記事でくわしく紹介する予定です。

紙をやめる順番は「その紙に関わる人が少ない順」

迷子にならない準備ができたら、どの紙からやめるかを決めます。私なら、その紙に関わる人が少ない順に進めます。

事業所の紙は、全部やめるのが理想です。でも一度に全部やめようとすると、パソコンの中で書類を探せない職員が次々に出てきます。探せない職員は、上司やパソコンが得意な職員に聞くしかありません。聞かれた人は自分の手を止め、聞いた人はその人の手が空くまで待つ。2人の仕事が止まってしまうんです。関わる人が少ない紙から始めれば、困る人が少ないうちに慣れることができます。

紙をやめる4つの段階。念のため印刷している紙、事業所の中だけで回覧する紙、外の事業所とやりとりする紙、利用者・家族の署名が要る紙の順に、関わる人が増えていく

  1. 段階1:自分たちが念のため印刷している紙(元がパソコンの中や介護ソフトの中にあるデータ)
  2. 段階2:事業所の中だけで回覧する紙(会議の記録、研修の記録など)
  3. 段階3:外の事業所とやりとりする紙(FAXで届く書類など)
  4. 段階4:利用者・家族の署名が要る紙(契約書など)

数字が大きくなるほど、関わる人が増えます。段階1は事業所の中だけで決められますが、段階4は利用者や家族にも関わってもらう必要があります。

段階1:元がデータなのに印刷している紙をやめる

最初にやめてほしいのは、もともとデータで作られているのに、念のため印刷している紙です。

たとえば、給付管理票や、国保連に送る請求書、実績が載った利用票。どれも介護ソフトの中で作り、データで国保連に送っているのに、毎月たくさん印刷して、なんとなく紙で取っておいている事業所は少なくありません。

これらは、印刷せずにPDFのまま保存しておけば大丈夫です。2021年1月の国の基準の改正で、事業所は基準で決められた書類を、作るのも残すのもデータで行ってよいことになりました(被保険者証に関するものは除きます。出典:厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」)。ただ、書類をどれくらいの期間残すかなどの細かい決まりは、自治体によって違う場合があります。気になるときは、事業所の指定を受けている自治体に確かめてください。

段階1のいいところは、誰にも迷惑がかからないことです。印刷をやめても、取引先にも利用者にも変わりはありません。事業所の中で「これは印刷しない」と決めるだけで始められます。

段階2〜4:事業所の中から外へ、署名が要る紙は最後に

段階1に慣れたら、事業所の中だけで回覧する紙に進みます。会議の記録や研修の記録のように、職員どうしで見るだけの紙です。ここは職員が慣れるまで少し時間がかかりますが、取引先には関わりません。

段階3は、外の事業所とやりとりする紙です。外から届く紙は、こちらだけで今日からデータにできます。

私自身、外出先から事務所に電話をして、「〇〇の書類って届いてます?」「そこに〇〇って書いてあります?」と確かめてもらったことがあります。そのときは、たまたま事務所に人がいたから確かめられたんです。誰もいなければ、事務所に戻るしかありませんでした。

たとえば、事務所に届いたFAXを、事務所にいる職員がスキャンしてGoogleドライブに入れておく。そうすれば、サービスに入っているサ責や、契約に出ている相談員も、外出先のスマホでその書類を確かめられます。書類を見るためだけに事務所へ戻ったり、事務所の職員の手を止めて電話で読み上げてもらったりしなくて済むんです。

こちらから送る紙は、相手がFAXでしか受け取れないこともあるので、相手に合わせながら進めてください。FAXをeFax(インターネットFAX)に切り替えると、届いた書類がはじめからデータになり、スキャンの手間もなくなります。私が切り替えたときの費用や手間は、介護事業所の複合機は印刷だけでいい|eFaxに切り替える前に管理者が知っておきたい費用・手間・向かない事業所にまとめています。

段階4の、利用者や家族の署名が要る紙は、最後に回してください。決まりの確認がいちばん必要なところなので、この記事では「最後に回す」とだけお伝えしておきます。

データにしても、紙を手放せなかった事業所
支援先では、書類をデータにしたのに、紙でも残し続けている事業所がありました。紙が目に見えないことが不安だったんです。職員のパソコン操作やデータの扱いが、まだ追いついていなかったことが理由だと私は見ています。

紙とデータの両方を残すと、手間は減るどころか増えます。だからこそ、先に「迷子にならない3つ」を職員に伝えてから、紙をやめる段階に進んでください。

「うちの事業所だと、どの紙から始めればいい?」と迷ったら、事業所にある書類を一緒に並べて、始める順番を考えます。

ファイル名は「探すときに思い浮かべる言葉」で付ける

紙をやめたあとに書類を見つけるには、ファイル名が決め手になります。データにして名前を付けておけば、検索するだけですぐに見つかるからです。

ただ、最初は検索しても見つからないことがあります。私も何回か名前を付け直しました。

私はケアマネジャーなので、訪問介護から毎月報告書が届きます。頭の中で「訪問介護から届いた、Aさんの10月の報告書を見よう」と思って、「Aさん 報告書」と検索しても出てこないことがありました。その訪問介護の報告書の題名が「モニタリング」だったので、ファイル名を「〇〇訪問介護_モニタリング_10月分_Aさん」と付けていたんです。

ファイル名は、探すときに頭に浮かぶ言葉で付けておくと見つかります。でも、その言葉は人によって違います。「報告書」と思い浮かべる人もいれば、「モニタリング」と思い浮かべる人もいます。だから、実際に使いながらでないと決められません。

ファイル名の言葉は、管理者が決める
ファイル名に使う言葉は、AIに決めてもらいません。AIに案を出してもらうことはできますが、事業所の職員が探すときにどの言葉を思い浮かべるかは、使いながら管理者が決めていくしかありません。職員が多いほど、この決まりづくりは大変になります。だからこそ、管理者が「うちはこの言葉で付ける」と決めて、そろえてください。

私が提供票のPDFに付けている名前の形は、提供票のPDFを事業所ごとに自動で分ける|ケアマネがFAXの前にAIに頼んだことで紹介しています。

どの紙からやめるかは、ChatGPTに並べてもらう

「うちにはどんな紙があって、どれからやめればいいのか」。これを1人で整理するのは大変です。そこでChatGPTの出番です。

事業所にある書類の名前を、思いつくまま書き出して、こう頼んでみてください。

ChatGPTへの頼み方
「介護事業所で紙をやめていきたい。いま紙で管理している書類を書き出すので、その紙に関わる人が少ない順(事業所の中だけ→外の事業所→利用者・家族の署名が要るもの)に並べて。
・給付管理票
・国保連への請求書
・会議の記録
・研修の記録
・FAXで届く書類
・契約書」

書き出すのは書類の名前だけです。利用者の名前や、書類の中身は書かないでください。

ChatGPTが並べてくれた案を見て、どこから始めるかを決めるのは管理者です。AIは事業所の事情を知りません。「この書類はうちでは外とやりとりしている」など、合わないところは直して使ってください。

紙をやめると、経費が減って、利用者さんに使える時間が増える

紙をやめて減ったものは、コピー用紙やインク・トナーにかかる印刷代、紙を綴じたファイルを置く保管場所、そして書類を探す時間です。

もう1つ大きかったのは、頭の負担です。私はデータにした書類をGoogleドライブで管理し、スマホやノートパソコンとつないでいるので、外出先でも書類を確かめられます。介護保険の被保険者証や負担割合証、主治医意見書、照会の書類などを、紙のままかばんに入れて持ち歩かなくて済むようになりました。身軽になりましたし、どこかに置き忘れる心配もありません。

事業所にとっては、減った印刷代や倉庫の場所はそのまま経費の削減になります。書類を探していた時間が減れば、その時間にかかっていた人件費も、利用者さんと向き合う時間に回せるはずです。

外出先で書類を確かめられるようになると、書類を見るためだけに事務所へ戻る回数も減ります。その分、訪問をもう1件増やしたり、家族やほかの事業所からの問い合わせにその場で答えたりできます。すぐに答えてくれる事業所には、次の相談も来やすくなるはずです。

明日から、まず2つやってみてください

最初の一歩は、次の2つです。

  1. もともとデータで作られている書類は、印刷せずにPDFで保存する(給付管理票、国保連への請求書、利用票など)
  2. ファイル名の付け方を、事業所で1つにそろえる

紙をやめられないのは、紙のほうが安心だからです。その安心を、パソコンの中でも同じように持てるようにすること。それが、ペーパーレス化の本当の始まりだと私は考えています。難しければ、一緒にやります。

うちの事業所の紙も、減らせますか?

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