2026.9.16
DX・AI活用
介護事業所の複合機は印刷だけでいい|eFaxに切り替える前に管理者が知っておきたい費用・手間・向かない事業所
「提供票、届いていますか」の電話で、外にいた職員が事務所に戻る。届いたFAXが誰の分か分からず、複合機の前で紙を配り直す。トナーが切れて、急ぎのケアプランが印刷できない。事業所を運営していれば、見覚えのある光景だと思います。
私は現役のケアマネジャーとして、事務所を運営しています。2025年1月にFAXを複合機からeFax(インターネットFAX)に切り替え、複合機は印刷だけに使うようにしました。切り替えて1年8か月。何にいくらかかり、どの手間が減り、どんな事業所には向かないか。管理者が決めるときに要る材料を、この記事にまとめます。
この記事でできるようになること
- 複合機とeFaxの費用と手間を、自分の事業所の数字で比べられる
- eFaxに向く事業所・向かない事業所を表で見分けられる
- 届いたFAXの利用者情報をAIに渡すときの決まりを作れる
結論:介護事業所の複合機は、印刷だけでいい
FAXの送受信はeFaxに移し、複合機はケアプランや契約書の印刷だけに使う。これが1年8か月使った結論です。
理由は、FAXの手間のほとんどが「紙」から生まれているからです。届いた紙を仕分ける、探す、運ぶ、捨てる。この4つは、FAXがファイルで届けば全部なくなります。印刷は残りますが、印刷は複合機の前に立つ一瞬で終わり、外出先で困ることもありません。
複合機を処分する必要はありません。私の事務所では2023年7月に買い取った機種をそのまま印刷専用にして、減価償却が終わるまで使います。リースなら、満了に合わせて印刷だけの安い機種に替えれば済みます。
条件は1つです。職員が日常的にパソコンでメールを見ていること。ここが当てはまらない事業所は、先に「eFaxに向く事業所、向かない事業所」の表を見てください。
複合機とeFaxの比較表
費用・受信・送信・停電・誤送信・仕分けの8項目で並べました。金額は私の事務所の実物です。複合機は2023年に買い取ったときの請求書、eFaxは2025年1月からの毎月の請求明細を開いて確認しました。

費用の見方を補います。eFaxは年間基本使用料19,800円(税込)に、無料枚数を超えて使ったときの料金1,100円(税込)が月に1〜4回付き、直近1年の実支払は47,300円でした。月にならすと約3,900円です。複合機側の初期費用266,420円は、本体・3年保守・訪問設置・無線LAN・トナー4色の合計で、5年使えば月4,400円ほどに当たります。つまり、機械代だけを比べてもeFaxのほうが安く、複合機側にはさらに紙・トナー・FAX回線の代金が乗ります。eFaxには、機械代もトナー代もありません。
回線については、事業所の使い方で答えが変わります。私の事務所は電話の主回線を残し、FAX専用の回線だけを解約しました。NTT東日本への支払いは2024年12月分が最後です。FAX専用の回線を1本持っている事業所なら、同じように1本減らせます。電話とFAXを1本で兼ねている事業所は、回線は減りませんが、2026年4月1日利用分からメタル回線の加入電話の基本料が事務用で月330円上がっている(ひかり電話は対象外)ので、契約を見直すきっかけにはなります。
比較表の根拠になった、2025年1月の切り替え
複合機で困っていたのは、仕分けではなく「探す・確かめる」
紙のFAXの手間は、仕分けの数分ではなく、そのあとに出ます。
会社員だったころの事務所には、ケアマネジャーが数人いました。実績が届くと、A利用者はAケアマネ、B利用者はBケアマネと、紙を手で振り分けます。ここまでは数分です。困るのはそのあとでした。5枚のはずが3枚目だけない。こちらが捨てたのか、先方が送り漏れたのか分からない。電話をかけて、つながらなければ確認の仕事が1つ増える。
複合機そのものにも、次のような手間がありました。
・トナーが切れて在庫がなく、ケアプランが印刷できない
・シール用紙をセットした直後にFAXが届き、シールに印刷される
・先方が話し中で送れず、何度もかけ直す
・送れたつもりで送れていなかった
・2人が同時に印刷し、片方の大量印刷が終わるのを待つ
・停電すると使えない
シュレッダーにも時間を取られます。1回は数分でも、誰かが紙を溜めて運んで細断する仕事が毎日あります。それ以上に困るのは、細断したら二度と確かめられないことです。「たしかあの書類あったはず…」と思っていても、探し出すことは不可能なんです。でもファイルで届いていれば、あとから開いて確かめられますよね。
職員が複数いる事業所ほど、この「探す・確かめる」は増えます。届く枚数が増えるだけでなく、誰が受け取ったか分からない紙が増えるからです。
切り替えで決めたことと、その理由
切り替えは2か月かけました。手順と、そうした理由を書きます。
・eFaxの会社を2社くらべ、仕組みと料金で決める
・FAX番号は新しくなるので、2か月間は古い番号と新しい番号を両方持った。提供票は月1回のやりとりなので、1周分重ねれば全取引先に新番号が行き渡る
・取引先には「◯月からFAX番号が変わります」と1度だけ知らせた。介護事業所の名簿(ハートページなど)に載せる番号もeFaxの番号に変える
・送信は1か月目からeFax、受信は2か月目から新番号に切り替えた。送信は自分だけで完結するが、受信は相手が登録を変えるのを待つ必要があるため
・複合機(ECOSYS M6635cidn・A4まで)はそのまま印刷専用に。買い取っているので、減価償却が終わるまで使う
切り替えたあと、印刷は月100枚もありません。シュレッダーにかける紙も数十枚になりました。紙が減ると、トナーの交換も、紙の補充も、その分減ります。
これから切り替える事業所は、番号を重ねる期間を「自分の事業所のFAXの周期」で決めてください。提供票と実績が月1回なら2か月、それ以外のやりとりが多いなら3か月あれば、届かなくなる相手は出ません。
送る流れ、受ける流れ
切り替えたあとの日常を、そのまま書きます。難しい操作は1つもありません。
送るとき
Googleドキュメントで文書を作り、PDFで保存。ファイル名は次の形です。
内容_送る日付_送付先_利用者名
例:サービス担当者会議の照会_20260901_あおぞら訪問看護ステーション_介護太郎.pdf
eFaxにログインして、宛先の事業所を選び、ファイルを添えて送信ボタンを押す。これで終わりです。ログインの入力はブラウザやパスワード管理ソフトに覚えさせておけば、毎回打ち込むことはありません。紙をスキャンして送ったことは、この1年8か月で一度もありません。文書を最初からパソコンで作るからです。

受けるとき

届いたFAXはGmailに入ります。パソコンにダウンロードしたあと、仕分けはAIに頼んでいます。研修の案内や求人広告はゴミ箱へ。返信が要りそうなものは、ファイル名に【要確認】を付けて決まったフォルダに置く。そのフォルダを9時・12時・15時・18時の4回見に行き、名前を付けてクラウドに保存します。AIが受け持つのはここまでで、返事を書いたり、最後に送信するのは人である私です。
受信の件数は、直近28日で145件、月にするとおよそ150件でした。送信は提供票だけで月31通です(取引先64件のうち、eFaxで送る事業所が31件)。件数が数えられること自体が、紙にはなかった利点です。自分の事業所で同じ数を出せば、次の章の見積もりに使えます。
送り間違えは減ったが、なくなってはいない
eFaxそのものに困ったことはありません。一斉送信ができ、外出先で送受信でき、そのぶん楽になりました。ただ、機械を替えても人の失敗までは消えません。送り先の間違いです。
複合機のころの回数は数えていませんが、月に1回ほどあった送り間違いが、半年に1回くらいに減った感覚です。減った理由は2つ。パソコンの画面は複合機の液晶より宛先を確かめやすいこと。もう1つは、宛先を目で探さず、画面の検索(Macは⌘+F、WindowsはCtrl+F)で事業所名を打って選ぶようにしたことです。
AIに任せていないこと
送信ボタンと宛先の確認は、人が受け持ちます。AIが選んだ宛先に自動で送る仕組みは作っていません。宛先を間違えれば、利用者の名前とサービス内容が書かれた書類が、関係のない事業所に届きます。その電話を受け、謝るのは人間です。だから、この2つは人が請け負っています。
事業所で決めるなら、「送信ボタンは必ず人が押す」を最初の決まりにしてください。ここさえ守れば、eFaxで起きる失敗は複合機のころより減ります。
eFaxに向く事業所、向かない事業所
eFaxは、職員がメールを見る習慣さえあれば、どの事業所でも使えます。逆に言えば、その習慣がない事業所では、届いたFAXを誰も見ないという新しい問題が起きます。◯=eFaxに向く、▲=準備すれば向く、✕=いままでのままでよい、で5つの状況を並べました。自分の事業所がどこに当てはまるか、見てみてください。

◯が多ければ、すぐに切り替えて問題ありません。▲が多い事業所は、先に「メールを1日に何回見るか」を決めてから切り替えると、届いたFAXの見落としが起きません。私の事務所は9時・12時・15時・18時の4回と決めています。日常的にパソコンを使う職員がいれば、苦手な人でも1〜2か月で使えるようになります。✕が多ければ、いまは複合機のままで構いません。無理に変えて、FAXを誰も見ない事業所になるほうが困ります。
メールの確認をAIに任せたい
FAXの中身をAIに読ませるときの決まり
届いたFAXには利用者の名前が入っています。仕分けをAIに頼むなら、どこまでAIに見せ、どこまでAIに記録させ、どこから人がやるかを先に決めておく必要があります。私の事務所の決まりは次の5つです。
・AIに見せる前に伏せるもの:FAXの中身の9割は、利用者の名前などを伏せてから渡す
・AIに記録させないもの:ケアプランのように個人情報が残る書類の中身
・AIに記録させてよいもの:画像から読み取れる特徴だけ。たとえば「独居で身寄りがいない」「同居家族は他県」「住所は丁目まで」
・AIの仕事の終点:ファイル名で「これは要確認」と分かるようにするところまで
・人が持つ仕事:返信の内容を決めること、送ること
最後の2つを分けている理由は、返信までAIに任せると、利用者の情報を含んだ文章がAIの側で作られ、誰も読まないまま外に出る形になるからです。仕分けは間違えてもやり直せますが、送った返信は取り戻せません。
事業所で決めるなら、この5つを職員と一緒に紙に書いてください。AIに何を見せるかは、事業所ごとに変えて構いません。変えてはいけないのは、送るのが人だということだけです。
浮いた時間は月におよそ5時間
eFaxにして減った手間を時間にすると、職員1人で月におよそ5時間になります。通数はGmailと取引先の一覧で数えた実数です。1件あたりの時間は測っていないので、私の記憶で置きました。前提を全部見せておきます。
| 減った手間 | 前提 | 月の時間 |
|---|---|---|
| FAXのために事務所へ戻る | 15分×月3回 | 45分 |
| 送信1通の手間(印刷と刷り直しがなくなった) | 3分×月31通(提供票のみ) | 93分 |
| 受信1通の手間(仕分け・保管) | 業務のFAX50通×1.5分+営業のFAX100通×0.5分 | 125分 |
| 「届いてますか」の電話に外出先で即答 | 月4回×1回およそ3分 | 12分 |
| 紙の管理とシュレッダー | 月15分 | 15分 |
| 合計 | 290分(およそ4.8時間) |
厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査」の常勤ケアマネジャー平均月給(約37.5万円)を月160時間で割ると、時給はおよそ2,300円です。4.8時間なら、月に約11,100円分の時間が本来の仕事に戻った計算になります。eFaxの費用は月におよそ3,900円(年47,300円÷12)ですから、eFaxの月3,900円で、月7,000円分の時間を買い戻している計算です。
これは職員1人の数字です。FAXを扱う職員が3人いれば、事務所全体では3倍になります。管理者が見るべきは、eFaxの月3,900円ではなく、職員の人数をかけた側の数字です。
出典:厚生労働省 令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要
自分の事業所の数字で、同じ表を作ってみてください
上の表は、私の請求書と受信件数で作ったものです。同じ表を、自分の事業所の複合機の請求書と、先月のFAXの枚数で埋めてみてください。切り替えるか、いままでのままでいるか。決めるための材料はそれで揃います。
月に5時間が事業所に戻ってきたら、何に使えるでしょうか。外出先から戻る職員が1人減る。月末の提供票が定時に終わる。空いた午後に、気になっていた利用者さんのお宅へもう1軒寄れる。
紙が減ったあと、次に何をAIに任せるか。そこからは事業所ごとに答えが違うので、一緒に考えます。
FAXの次は、何を減らせますか?
あわせて読みたい
eFaxで受けた提供票を、そのあとどう処理しているか知りたい方へ
提供票のPDFを事業所ごとに自動で分ける|ケアマネがFAXの前にAIに頼んだこと →(https://puzzle-peace.online/magazine/644/)
FAXの前に、AIを入れる順番を整理したい管理者の方へ
介護事業所の管理者がAIを導入するとき最初にやるべき3つのこと →(https://puzzle-peace.online/magazine/628/)
こんな課題を解決します
- ●地域に信頼される事業所を作りたい
- ●業務効率を上げ、スタッフ間の連携を強化したい
- ●新たに介護事業を始めたい
- ●紙業務をデジタル化し、IT環境を整備したい