2026.9.6
DX・AI活用
提供票のPDFを事業所ごとに自動で分ける|ケアマネがFAXの前にAIに頼んだこと
- 提供票のPDFを、事業所ごとに分ける作業をAIに任せる
- ファイル名を見るだけで送り方が分かる形にする
- 自分の手は確認と送信だけに絞る
月末が近づくと、提供票のことが頭から離れなくなる。複合機の前に立つ時間が長い。送れなかった分を翌朝に送り直す。ケアマネジャーなら、覚えのある光景だと思います。
私は現役のケアマネジャーとして毎月およそ60件の提供票を送っています。以前は全件を複合機からFAXしていました。いまは、そのうち「PDFを事業所ごとに分けて名前を付ける」部分だけをAIに任せています。全部ではなく、一部です。どこを任せてどこを自分でやっているのか、その理由までご紹介します。
提供票の仕分けは、月に1回、必ず送り切らなければならない仕事
先に、この作業を知らない方のために説明しておきます。
ケアマネジャーは毎月20〜25日ごろに、担当する利用者さんが翌月に使う訪問介護やデイサービスなどの事業所へ「提供票」を送ります。翌月の利用予定を書いた書類で、受け取った事業所はこれを見て「この方は来月、この曜日にサービスを提供する」と確認します。
提供票は予定表であると同時に、翌月の請求の出発点でもあります。事業所は月末に実績を書き込んで返し、ケアマネジャーはそれをもとに給付管理票を作って国保連に出します。この書類が届かないと、事業所は「来月は予定がない」と判断します。いつもの予定が1つ抜けていれば、その日はサービスが提供されない。つまり、送り忘れや送り間違いがそのまま利用者さんの生活に影響します。事務作業ではありますが、間違いが許されない大事な事務作業です。
そして、紙の量が多い。厚生労働省がまとめたケアプランデータ連携システムの事例集には、「毎月FAXで送る提供票の紙が2,000枚以上」という事業所の声が載っています(出典:厚生労働省「ケアプランデータ連携システム 活用事例」)。規模はさまざまですが、困りごとの形はどの事業所も同じです。
以前のやり方と、そこで起きていた間違い
私が以前やっていた手順は、次の3つでした。
- ・介護ソフトに翌月の予定を入力する
- ・提供票をまとめて印刷する
- ・複合機の前で、1事業所ずつFAXする
提供票を送る時期は、業界全体が同じ作業をしている時期です。相手のFAXが混み合って送れないことがあり、送れなかった事業所の紙だけを残して、翌朝いちばんに送り直す。そういう月末を毎月繰り返していました。

この手順で負担が大きいのは、印刷から送信までを1事業所ずつ繰り返す部分です。そして、繰り返しの多い作業ほど、人の手による間違いが入り込みます。私自身、次の2つを実際に経験しています。
介護ソフトの画面で月を切り替え忘れると、今月の提供票がそのまま出てきます。印刷した紙がそのまま無駄になるだけでなく、気づかずに送れば相手の事業所から「今月分が届いています」と連絡が来て、印刷から送信までをやり直すことになります。過去に数回、これをやりました。
「〇〇事業所 北営業所」と「〇〇事業所 南営業所」のように似た名前の事業所は、複合機の送信先一覧で隣に並びます。急いでいるときほど、押し間違えてしまいます。
どちらも、注意していれば防げたはずの間違いです。しかし「注意する」だけに頼ったやり方では、忙しい月末に必ずほころびます。間違いはたいてい人が起こします。この前提は、AIを入れた後も変わりません。この点は、後ほどもう一度触れます。
AIへの最初の頼み方で、結果はほぼ決まる
自動化を考え始めたのは、ChatGPTのような「話しかけると文章で返してくれるAI」を使い慣れたあと、「頼むとパソコンの中のファイルを自分で動かしてくれるAI」が使えるようになってからです。
最初に頼んだのは、ファイル名の付け直しでした。提供票のPDFが入っているフォルダ(Macならファインダー、Windowsならエクスプローラー)の画面をスクリーンショットで撮り、AIに見せて、次のように伝えました。
- ここに入っているファイルの名前を付け直してほしい
- これは毎月やっている作業で、いまは手で1つずつ打ち直している
- 目的は、事業所ごとに送るためと、送り方をファイル名で判別できるようにするため
- 名前の形は「◯月の提供票_(送り方)事業所名」。(L)はLINE、(メ)はメール、印がなければeFax
参考までに、実際のファイル名はこのような形です。
10月の提供票_(メ)訪問看護ステーションなごみ.pdf
10月の提供票_ケアホームさくら.pdf ←印がないのでeFax
ここで大事なのは3つ目です。「名前を変えて」だけでは、AIは自分の想像で名前を付けます。何のためにその名前が必要かまで伝えると、こちらが意図した形で仕事をしてくれます。人に仕事を頼むときと同じです。
この提供票の作業について、うまくいかなかった回はありませんでした。最初から目的まで伝えたことが、そのまま結果につながったと考えています。
この記事で覚えてほしい大切なことはつぎの1点です。AIに作業を頼むときは、「何をしてほしいか」より先に「何のためにしてほしいか」を伝えてください。目的を明確に伝えるとAIは意図を汲んで作業をしやすくなります。
いまの仕組み:PDFを事業所ごとに分け、送り方付きの名前で保存する
介護ソフトから提供票をダウンロードすると、全員分がひとつのPDFにまとまって出てきます。名前は「MEM0969.pdf」のような記号だけで、開かなければ誰の分か分かりません。以前はこれを印刷して、紙をめくりながら事業所ごとに束ねていました。
いまは、このPDFをAIに渡すと、次の3つが終わった状態にしてくれます。
- ・全員分のPDFを、事業所ごとに分ける
- ・分けたPDFに、送り方と事業所名が分かる名前を付ける
- ・そのまま保存する

設計で決めたことが2つあります。
「1事業所=1ファイル」にする
要支援と要介護で分けることはしていません。相手の事業所が欲しいのは「来月の提供票」であって、介護度ごとではないからです。利用者さん単位でも介護度単位でもなく、事業所単位で1つのファイルにまとめる。相手が受け取ったときに扱いやすい形を基準にしています。
送り方をファイル名に入れる
私はいま、提供票をeFax・メール・LINEの3つの方法で送っています。送る直前に頭の中で確認する順番は「どの方法で送るか」→「どこに送るか」です。複合機だけだった頃は送り方が1つでしたから、考えるのは送り先だけでした。方法が3つになった今は、ファイル名を見た瞬間に送り方が分かる必要があります。
頭の中で確認する順番と、ファイル名の並びを揃える。これだけで、送るときの迷いがなくなります。なお、カイポケのデータ連携でつながっている事業所は、そもそもファイルを作らずに済むので、この仕組みの対象から外しています。
AIに任せていない3つの工程と、その理由
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。私はこの仕組みの中で、次の3つをAIに任せず、自分でやると決めています。
1. 介護ソフトからPDFをダウンロードする。
2. 送る前に、ファイル名と中身が合っているか確認する。提供票別表には事業所名と単位数が載っているので、別表と照らせばファイル名と事業所の一致を確かめられます。送る事業所の数にもよりますが、5〜10分で終わります。
3. 送信する。eFaxもメールもLINEも、送信ボタンは自分で押します。仕事の責任はまだ人にあります。だから最終チェックを兼ねて、送信は人がやります。

なぜ残しているか。先ほどの話に戻ります。間違いはたいてい人が起こします。AIがPDFを正しく分けてくれても、私が送り先を間違えれば、利用者さんの名前とサービス内容が書かれた書類が、関係のない事業所に届きます。これは個人情報の漏えいです。送信ボタンを自分で押している限り、送る直前にもう一度、宛先を見る機会が残ります。
ダウンロードから送信までを全部AIに任せれば、もっと楽になるのは分かっています。それでも送信だけは自分で押すと決めているのは、間違って送ったときに謝りに行くのはAIではなく人間だからです。楽になる範囲と、自分が責任を取れる範囲を、同じにしておきたいと考えています。
自分の事業所で始めるときに、先に決めておくこと
ここまで読んで「うちでもやってみよう」と思った方に、始める前に決めておいてほしいことが2つあります。
1つ目。AIに頼む目的を、面倒がらずに言葉にしてください。「毎月この作業をしていて、事業所ごとに送るために、送り方が分かる名前にしたい」。ここまで書いてから頼むと、意図を汲み取って作業をしてくれるようになります。
2つ目。送る前の確認を、工程として残してください。5〜10分の作業です。AIがどれだけ正確でも、この確認を飛ばすと、送り先の間違いは防げません。
空いた時間で、何ができるでしょうか
月末に複合機の前に立つ時間と、送れなかった紙を翌朝に送り直す時間が、まるごとなくなりました。私の場合、この作業には記憶ではおよそ2〜3時間かかっていました。厚生労働省の調査では常勤ケアマネジャーの平均月給は約37.5万円(出典:令和6年度介護従事者処遇状況等調査)。月160時間で割ると時給はおよそ2,300円ですから、毎月5,000〜7,000円分の時間が、アセスメントやケアプランの作成など、本来あてたい仕事に戻ってきた計算になります。
もし月末の数時間が空いたら、あなたなら何に使うでしょうか。気になっていた利用者さんのお宅にもう1軒寄る。担当者会議の準備を落ち着いてやる。あるいは、定時に帰る。どれも、提供票の仕分けに追われていた頃には後回しになっていたことだと思います。AIに任せる目的は、作業を減らすことそのものではありません。減った分の時間を、本来あてたかった仕事に、堂々とあてられるようになることです。
AIを介護の仕事で使うこと自体に迷いがある方へ
ChatGPTって介護の仕事で使っていいの?現場で役立つ9つの使い方 →
管理者の立場で導入を考えている方へ
介護事業所の管理者がAIを導入するとき最初にやるべき3つのこと →
ここに書いた型は、多くの事業所でそのまま使えると思っています。ただ、介護ソフトの種類や送り方の組み合わせは事業所ごとに違います。自分のところに合わせて組み直すところで手が止まったら、無料相談でお聞かせください。一緒にやります。
うちの介護ソフトでも、できますか?
こんな課題を解決します
- ●地域に信頼される事業所を作りたい
- ●業務効率を上げ、スタッフ間の連携を強化したい
- ●新たに介護事業を始めたい
- ●紙業務をデジタル化し、IT環境を整備したい