2026.9.28
DX・AI活用
「ラインワークスを入れたい」と言われたら|介護の申し送りをチャットに変える前に管理者が決めること
この記事でできるようになること
- 職員から「ラインワークスを入れたい」と言われたときに、入れる前に管理者が決めることが分かる
- 申し送りを利用者ごとのトークルームと職員だけのトークルームに分けて始められる
- 職員にラインワークスへ書いてほしいことを、「誰が・いつ・どこで・どんなことがあったか」の3つにまとめて伝えられる
「申し送り、ラインワークスでやったほうが早くないですか?」
職員からこう言われて、入れるかどうか迷っていませんか。ラインワークス(LINE WORKS)は、ふだん使っているLINEとほとんど同じ操作で使える、仕事用のチャットです。職員30人までなら無料で始められるので、「とりあえず入れてみよう」と思いやすいのも特徴です。
私はこれまで、支援している2つの事業所でラインワークスの導入を手伝ってきました。立ち上げたばかりの訪問介護事業所(職員4〜6人)と、介護施設(職員30人弱)です。正直に言うと、どちらもうまくいったとは言えません。介護施設のほうは、入れた直後こそトークが動いていましたが、いまも申し送りノートのほうが使われています。
うまくいかなかった理由は、ラインワークスそのものではありませんでした。入れる前に、管理者が決めておくことがあったんです。この記事では、私の失敗から見えた「管理者が決めること」を順番に紹介します。
「ラインワークスを入れても、申し送りノートに戻ってしまう」のはなぜ?
ラインワークスを入れても申し送りノートに戻ってしまうのは、「これからはこれを使う」と決めて、言い続ける人がいないからです。
介護施設では、私が現場の職員と一緒に改善を進める形で関わっていました。ラインワークスを提案したのも私です。職員の皆さんも大きな抵抗なく受け入れてくれて、入れた直後はトークルームに報告が届いていました。
ところが、しばらくすると申し送りノートに戻っていきました。外部の私には、主任さんを含めた現場の職員に「必ずこちらを使ってください」と言い切る力がありませんでした。それに、人は慣れたやり方があると、新しい道具を使うことに抵抗を感じるものです。これも、ノートに戻った理由の1つだと考えています。
もう1つ、壁がありました。この施設では、職員の私用のスマホにラインワークスを入れてもらっていたので、仕事中にスマホを触ることに抵抗があったんです。たとえば、排泄介助の途中で皮膚の発疹に気づいても、衛生面からその場でスマホは触れません。ほかの職員から「私用で使っているのでは」と見られるのも気になります。「仕事中に使うと、どこかに置き忘れてきそう」という声もありました。事業所のスマホやタブレットを置く案も出ましたが、予算がなく見送りました。
訪問介護のほうは、ラインワークスとホワイトボードを一緒に使う形で動き始めました。それでも、報告や相談をどんな文にすればいいのか分からず、職員が事務所に戻ってきて口で伝える場面が続きました。
どちらも、道具の使いにくさが原因ではありません。抜けていたのは、「誰が使うと決めて言い続けるか」と「どのように使い続けるかを決めておくか」の2つです。どちらも、使い続けるための決まりでした。あなたの事業所で入れるなら、ここから紹介する3つを先に決めておいてください。
決めること①「これからはラインワークスを使う」と管理者が言い続ける
1つ目は、管理者が「これからはラインワークスを使う」と決めて、言い続けることです。
職員が申し送りノートや口頭で伝達をしようとしていたら、管理者や主任が「まずはラインワークスを使って」と呼びかけるんです。
ただ、「これからはラインワークスを使う」と決めるのは、管理者にしかできない役目です。「使うと決めたら、使い続ける」。この強い決まりを、管理者の口から職員に伝え続けてください。
そして、使い方はマニュアルのように文にして残しておいてください。どのトークルームに何を書くのか、休みの日はどうするのか。
マニュアルを作るのは手間がかかり、難しく感じるかもしれません。でも、事業所でのラインワークスの使い方を文にしておくと、職員から使い方を聞かれたときに「マニュアルを見てね」とひと言で伝えられます。
マニュアルは、ときどき見直しが必要です。それでも一度つくってしまえば、新しい職員が入っても、一人で使い方を覚えられます。管理者や先輩職員が横について教える時間が減るので、その時間にかかっていた人件費を削減できるんです。
では、そのマニュアルにはどんなことを書けばいいのか。次の②と③で紹介します。
決めること② トークルームを「利用者ごと」と「職員だけ」に分ける
2つ目は、トークルームの分け方です。訪問介護でも介護施設でも、利用者ごとのトークルームと、職員だけのトークルームに分けました。

利用者ごとのトークルーム
「Aさんルーム」「Bさんルーム」「Cさんルーム」のように、利用者1人につき1つ作ります。その方に関わる職員が入り、様子の報告や相談を書きます。
職員だけのトークルーム
「〇〇事業所メンバー」のルームには、事業所全体に関わる申し送りを書きます。このほかに「クレーム」のルームや「新規受付」のルームも作りました。
「〇〇事業所メンバー」のルームに書くのは、たとえば「職員の〇〇さんが今日お休みです」「台風のため、利用者の〇〇さんがお休みになりました」といった連絡です。
利用者ごとに分けておくと、あとから「Aさんのことで何があったか」を確かめたいとき、そのルームを見ることで、情報に早くたどり着けます。申し送りノートのように、ページをめくって探す手間がなくなるんです。たとえば、ケアマネジャーから「最近のAさんの様子はどうですか」と聞かれたときも、Aさんルームをさかのぼれば、いつ、何があったかをすぐに答えられます。
職員だけのルームを分けておくのにも理由があります。「〇〇さんがお休みです」といった事業所全体の連絡が、利用者のルームに混ざらないので、利用者ごとの記録が読みやすいままになるんです。
決めること③ 休みの日は見なくていい、急ぎは電話、を事業所で決める
3つ目は、休みの日と、急ぎのときの決まりです。
仕事用のチャットを個人のスマホに入れると、職員からはこんな声が出てきます。
職員からよく出る声
- 休みの日も通知が来て、気が休まらない
- 既読がつくと、すぐ返事をしなければいけない気がする
- 個人のスマホに入っていると、プライベートと仕事の切り替えができなさそう
私は「休みの日は見なくていい」と決めて、職員にもそう伝えていました。見なくていいと分かっていれば、休みの日に通知が来ても、慌てずに済みます。
では、休みの日でも知らせなければいけない急ぎの連絡はどうするか。これは電話にする、と決めておくのがいいと思います。ただ、何を「急ぎ」とするかは、事業所ごとに違います。訪問介護と介護施設では、急ぎの中身がまったく変わるはずです。あなたの事業所では何が急ぎなのかを管理者が決めて、①で作るマニュアルに書き入れておいてください。
「どう書けばいいか分からない」には、まずチャット、補足は顔を合わせて
導入したあと、職員からよく聞いたのが「どんなふうに文章を書けばいいか分からない」という声でした。
私は、顔を合わせて口で伝えていたことも、「まずはチャットに残すように」と伝えていました。文章に残そうとすると、できるだけ要点を押さえようと頭が働くからです。そのうえで、補足したいことは、顔を合わせたときに口で伝えればいいんです。
チャットに書くのは、この3つだけで大丈夫です。
チャットに書く3つ
- 誰が(Aさんが)
- いつ・どこで(今日の13時ごろ、居室のトイレで)
- どんなことがあったか(立ち上がるときにふらついた)
文章にすると、こうなります。「Aさんが、今日の13時ごろ、居室のトイレで、立ち上がるときにふらつきました」。そのときの詳しい様子や、どう対応したかは、あとで顔を合わせたときに説明します。
最初から上手な文を書こうとしなくていいんです。3つがそろっていれば、読んだ人たちは何が起きたのかを知ることができます。
文章にできないときは、口で話してAIに整えてもらう
利用者の発言や家族からの相談を文章にするのが苦手な職員はいます。そういうときは、AIの音声入力を試してください。

スマホのChatGPTアプリなら、声で話しかけることができます。時系列が前後しても大丈夫です。思いつくままに話したあと、こう頼んでみてください。
「ラインワークスでサ責に報告したいから、いま話したことを整理した文章をつくって」
(「リーダーに」「看護師に」など、報告する相手は場面によって変えてください)
こうすると、職員は文章を組み立てる頭の作業をしなくて済みます。

ただし、AIに任せないこともあります。何を報告するのか、急ぎかどうかを判断するのは、その場にいる職員です。AIが整えてくれた文も、自分が見たことと合っているかを読み返してから送ってください。
AIに話すときは、先に「学習に使われない設定」にしておいてください。設定のしかたは、職員にChatGPTを使わせるときに決めた1つのルールにまとめています。
利用者の名前を書いていい?ラインワークスと個人情報の考え方
個人情報が入ることを恐れて、あれは書かない、これは書かないと決まりを増やすと、職員は、なにを伝えてよいのかわからなくなり、ラインワークスを使うことに抵抗感を覚えてしまいます。大事なのは、道具を使わないことではなく、情報をどう管理するかです。ラインワークスは、職員が辞めたら管理者がアカウントを削除できます。アプリがスマホに残っていても、ログインできなくなるので、過去のトークを読むことはできません。スマホには画面ロックをかけてもらう。私はこの2つで十分だと考えています。
ひとつだけ気をつけてほしいのは写真です。スマホに保存した写真は、アカウントを削除しても端末に残ります。たとえば、利用者の皮膚の赤みや発疹を撮って看護師に見せるときや、冷蔵庫の中や服薬カレンダーの残りを撮って家族に知らせるときです。ラインワークスに上げたあとは、必ずスマホの写真から削除してもらいましょう。

ラインワークスは無料で使える?費用の目安
ラインワークスは、職員30人までなら無料のフリープランで使えます。保存できる容量は、事業所全体で5GBです。30人を超えるときや、容量がいっぱいになったときは有料のプランになり、スタンダードプランで1人あたり月450円(年額契約・税抜き)です(2026年9月時点)。職員4〜6人の訪問介護なら、無料のまま始められます。
介護のICT導入には、都道府県の「介護テクノロジー導入支援事業」などの補助もあります。ただ、対象になる機器や締め切りは県ごとに違います。使えるかどうかは、事業所のある都道府県のページで確かめてください。

まずは1日1回、1か月続けてみてください
入れると決めたら、最初に管理者にしてほしいのは、ラインワークスを1日1回、1か月続けることです。
1か月続けると、何が不便で、何が良かったのかが見えてきます。「これは口で伝えたほうがよかったね」「これはラインワークスで送ったから良かったね」と、職員と振り返れるようになります。そこで分かったことを、①で作ったマニュアル(どのトークルームに何を書くか、休みの日や急ぎのときはどうするか)に反映していけばいいんです。
ラインワークスが続かないのは、道具のせいではありません。管理者が「これを使う」と決めて言い続けること、使い方をしっかりと決めて、マニュアルにして残すこと。この2つが、続けるための肝になると私は考えています。申し送りにかかる時間が短くなれば、その時間にかかっていた人件費も、職員が利用者さんと向き合う時間に変わるはずです。難しければ、一緒にやります。
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