2026.9.23
DX・AI活用
「ChatGPTは前の会話を忘れる」と言われたら|介護事業所がカスタム指示とプロジェクトに書いておくこと
- ChatGPTに毎回同じ説明をしなくて済むように、事業所の前提を1つの文にまとめられる
- その前提をカスタム指示とプロジェクトのどちらに書けばいいか、分けて置ける
- 職員が何人いても、事業所の前提をそろえておく手順が分かる
「ChatGPTって、前の話を覚えていないんですよね。毎回、一から説明し直さなくちゃいけなくて」
職員からこう言われたこと、ありませんか。ChatGPTを使い始めた人がまずつまずくのが、この「ChatGPTと前提をそろえること」なんです。昨日あれだけ説明したのに、今日の会話では「うちのデイサービスでは…」から話さないと、期待した答えが返ってこない。それが続くと、「説明するくらいなら自分で書いたほうが早い」と、使うのをやめてしまいます。
でも安心してください。前提は、一度つくっておきさえすれば、ほぼ毎回、説明をせずに済むようになります。この記事では、手間の少ない順に3つのやり方を紹介します。あなたの事業所に合うところから始めてみてください。

ChatGPTが前の会話を覚えていないのはなぜ?
ChatGPTは、新しい会話を始めると、前の会話で伝えたことを細かいところまでは引き継がない仕様になっています。
「メモリ」という、覚えておいてくれる機能もあります。ただ、提供しているOpenAIの説明にも、メモリは会話のすべての細かいところまで覚えているわけではない、と書かれています。昨日伝えた事業所の人数や、ご家族向けの文の調子が、今日の会話で使われるとは限らないんです。
つまり、職員の使い方が悪いわけではありません。ChatGPTの決まった場所に、最初から前提を書いておけば、この困りごとは必ず減らせます。
今日からできること:前提をメモに残して、会話の最初に貼る
「ChatGPTの設定がどこにあるかわからないんです」という方のために、いちばん手軽な方法を最初にご紹介します。それは、前提となる文をスマホなどのメモアプリに残しておいて、会話の最初に貼るやり方です。
この方法だけでも、毎回の説明を頭の中で組み立てずにコピペでサクッとChatGPTに伝えることができます。パソコンやAIが苦手な方におすすめの方法です。
私も最初は、この方法でした。前提の文をメモアプリに残して、毎回コピーして貼っていました。それでも、「この話はいつもと同じ前提だけど、こっちの会話は前提が違うから、文章を作り直さないと……」と考えるのに、ずいぶん頭を使っていたんです。前提を1つの文にまとめておくと、管理は楽になりますが、会話の中身によって前提を書き換えないといけない、という手間が残りました。この手間は、あとで紹介する「プロジェクト」で解決できます。
前提の文には何を書けばいいのか。今日はその作り方もご紹介します。自分で一から考えなくても大丈夫です。すでにChatGPTを使っている方が多いでしょうから、いつものChatGPTに質問してもらいながら作ると、書き漏れが減ります。
「私は介護事業所の職員です。ChatGPTに毎回同じ説明をしなくて済むように、会話の最初に貼る『前提の文』を作りたいです。事業所の種類、職員の人数、よく作る文章、読み手、文の調子、書いてほしくないことを、1つずつ質問してください。全部答えたら、10行以内の前提の文にまとめてください。」
できあがる前提の文は、たとえばこんな形です(架空のデイサービスの例です)。
・定員20名のデイサービスで働く職員です。職員は8名です
・お便りや、ご家族への連絡文を作ることが多いです
・読み手は利用者のご家族とケアマネジャーです。高齢のご家族も多いです
・文はやわらかく、専門用語は使わず、1文を短くしてください
・利用者の名前は書かず、「Aさん」と書いてください
・分からないことがあれば、書き始める前に質問してください
最後の「分からないことがあれば質問してください」は、ぜひ入れておいてください。前提に書き漏れがあっても、ChatGPTのほうから聞いてくれるので、その会話の答えが事業所に合ったものになっていきます。
ステップアップ①:カスタム指示に事業所の基本情報を入れる
会話を始めるたびに貼るのが手間になってきたら、前提の文をChatGPTの「カスタム指示」に入れておきます。カスタム指示に書いたことは、貼らなくても、すべての会話でChatGPTが前提にしてくれます。無料版でも問題なく使える設定です。
①左下の自分の名前から「設定」を開く
②「パーソナライズ」を選ぶ
③「カスタム指示」の欄に、前提の文を貼る

ここに入れるのは、どの仕事にも共通することだけにします。事業所の種類、自分の役割、文の調子、「分からなければ質問して」の一文などです。
ここに前提の文を入れてみると、それ以降のChatGPTとの会話がぐっと変わります。「今日はどこから説明しよう」と考える時間がなくなり、最初の一言(「Aさんの様子をケアマネに報告する文を一緒に考えて」など)で本題に入れます。1回目の答えから事業所に合った文が返ってくるので、言い直しも減るはずです。
ステップアップ②:仕事ごとにプロジェクトを分ける
お便り、見学の問い合わせへの返信、ご家族への説明文では、読み手も文の調子も違います。こうした仕事ごとに「プロジェクト」を分けておくと、さらに事業所に合った答えが返ってくるようになります。
プロジェクトは、仕事ごとに会話と資料と指示をまとめておける機能です。OpenAIの説明では、プロジェクトの指示はそのプロジェクトの中だけで使われ、カスタム指示よりも優先されます。無料版でも使え、1つのプロジェクトにファイルを5つまで入れられます(2026年9月時点)。
①左のメニューの「プロジェクト」から「新規」を選ぶ
②名前を付けて作成する(例:「お便り」「問い合わせの返信」)
③プロジェクトの画面の右上「…」から「プロジェクト設定」を開く
④「指示」の欄に、その仕事の前提を書く

私がAIの前提を仕事ごとに分けているのには、理由があります。ある案件を進めているとき、別の仕事で相手から指定された書き方を、AIが関係のない仕事の文章にも使ってきたことがありました。前提がひとまとめになっていると、こうした混ざり方が起きます。仕事ごとに分けておけば、お便りの文の調子が、問い合わせの返信に入り込むことはありません。

前提に書かないもの、書き直すタイミング
前提の文には、利用者の名前や、その方が分かる個人情報は書かないでください。前提は、そのあとのすべての会話でChatGPTが読むものだからです。
私自身は、話した内容を文字にしてAIに渡すことが多いので、会話の中に利用者のフルネームが入ってしまうこともあります。そのかわり、出てきた文章では必ずイニシャルにしてもらっています。個人情報を入れないように細心の注意は払っていますが、それでも入ってしまうことはあります。ただ、個人情報を恐れすぎて仕事が遅くなるほうが、利用者本人やご家族、関係する事業所にとって機会損失になると考えています。誰でもふだんから、スマホのなかに名前と電話番号や、手帳に書いた訪問の予定を持ち歩いています。よく考えてみたら、これも個人情報の取り扱いとしては怖いことですよね。AIだけを過剰に警戒しなくていい、というのがAIを使うにあたっての私の考え方です。ただし、それはAIの基本設定を「学習に使われない設定」にしたうえでの話です。設定のしかたは、職員にChatGPTを使わせるときに決めた1つのルールにまとめています。まだ設定をしていない方は、この記事を読んでいる流れでぜひ設定してください。設定はすぐに終わり、安心してAIを使えるようになります。
もう1つ、前提の中身を決めるのは管理者、とルールにしておくことをおすすめします。職員のだれもが前提を決めたり書き換えたりできると、めちゃくちゃになります。面倒でも、前提が変わるときは管理者が確認してから変えるようにしてください。ChatGPTに作ってもらった前提の文も、事業所の実際と合っているか、管理者が読んで確かめてから配ってください。
- 職員が入れ替わったとき
- 定員や担当件数が変わったとき
- 書類の様式が変わったとき
- ChatGPTの答えが、事業所の実際とずれ始めたとき
職員3人の前提をそろえたいときは?
たとえば、こんな相談があったとします。
「定員20名のデイサービスの管理者です。職員8名のうち3人が、お便りやご家族への連絡文をChatGPTで作っています。でも毎回『うちはデイサービスで……』から説明していて、人によって文の調子もバラバラです。職員はそれぞれ自分のスマホの無料版を使っています。事業所で前提をそろえるには、何から始めたらいいですか?」
私なら、こう答えます。
① 前提の文を、ChatGPTに作ってもらう
上の「前提の文をChatGPTと作る頼み方」をそのまま使ってください。
② その文を、職員それぞれのスマホのメモアプリに登録してもらう
会話の最初に貼るだけで、3人とも同じ前提から始められます。
③ 元の文は管理者が1つ持ち、1行目に更新日を書いておく
事業所の情報が変わったら、管理者が直して配り直します。
④ 慣れてきたら、各自のカスタム指示に貼ってもらう
貼る手間もなくなります。
理想を言えば、一人ひとりがAIに慣れて、自分で前提を管理し、書き直していけるのがいちばんです。ただ、事業所の前提が変わったときは、共有するしかありません。元の文が管理者の手元に1つあれば、3人の前提がバラバラになることはないはずです。
前提を渡しておけば、ChatGPTは毎回、事業所のことを分かった上で答えてくれます
ChatGPTが前の会話を忘れるのは、仕組みの上のことです。だからこそ、前提は人が書いて、最初に渡しておく。メモアプリに残すところからでも、今日から始められます。
慣れてきたらカスタム指示へ、できればプロジェクトへ。一から説明する時間がなくなった分、職員は利用者さんと向き合う時間を取り戻せるはずです。難しければ、一緒にやります。
うちの事業所の前提、何を書けばいいですか?
ChatGPTが間違えたとき、職員にどう伝えるか知りたい方へ
「ChatGPTは嘘をつくんでしょ?」と言われたら|間違えたあとに職員へ伝える3つのこと → https://puzzle-peace.online/magazine/661/
職員にChatGPTを渡す前に、決めるルールを知りたい方へ
「職員にChatGPTを使わせて大丈夫?」と聞かれたら|介護事業所が決めるのは1つだけ → https://puzzle-peace.online/magazine/656/
どのAIから始めればいいか迷っている方へ
介護事業所がAIを始めるなら、まずChatGPT一択でいい理由【現役ケアマネが解説】 → https://puzzle-peace.online/magazine/637/
こんな課題を解決します
- ●地域に信頼される事業所を作りたい
- ●業務効率を上げ、スタッフ間の連携を強化したい
- ●新たに介護事業を始めたい
- ●紙業務をデジタル化し、IT環境を整備したい