2026.4.26
DX・AI活用
介護業界18年の現役ケアマネがChatGPTを実務で使ってみた結果【正直レビュー】
「ChatGPTって介護の現場で本当に使えるの?」
「個人情報の扱いが怖くて踏み出せない」
——そう感じている事業所の経営者・管理者の方は多いはずです。
結論から言います。
ルールを決めてさえいれば、ケアマネ業務は確実に効率化できます。
私自身、この1年でアセスメント作成時間は2時間から30分〜1時間に短縮されました。
本記事では、介護業界18年・現役ケアマネの私が実務で使い続けて得た「本当に使える場面」と「導入時の注意点」を、公的根拠とあわせて正直にレビューします。
そもそもケアマネがChatGPTを使っていいのか?
まず多くの方が気にする「そもそも使っていいのか」という問題から整理します。
結論から言うと、個人情報の取扱いルールさえ守れば、ChatGPTを介護業務で使うことに法的な禁止はありません。ただし、守るべきルールははっきりしています。
介護事業者が守るべき公的ルール
介護事業者の個人情報取扱いは、個人情報保護委員会と厚生労働省が共同で発出している「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」が基準になります。
このガイダンスは令和8年4月1日に最終改正・施行されたばかりで、AI活用を含む最新の環境に合わせて整備されています。
ここで重要なのが、介護記録に含まれる情報の多くが「要配慮個人情報」にあたる点です。
要配慮個人情報とは、不当な差別や偏見が生じないよう特に配慮が必要な情報で、具体的には以下のようなものが該当します。
- 病歴・診療情報
- 障害(身体・知的・精神)の事実
- 介護関係記録に記載された心身の状態
- 健康診断の結果
要配慮個人情報を取得・利用する場合は、原則として本人の同意が必要です。
つまり、利用者の実名や特定できる情報をそのままChatGPTに入力することは、個人情報保護法上のリスクがあります。
訪問介護事業者には守秘義務もある
さらに、訪問介護事業者には介護保険法上の運営基準(第33条)で秘密保持義務が課されています。「正当な理由がなく、業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らしてはならない」という規定です。
この2つを踏まえると、ケアマネや介護職員がChatGPTを使うときのルールは次のようにシンプルに整理できます。
- 利用者の氏名・住所・電話番号・家族構成の詳細など、個人を特定できる情報は入力しない
- 病名・薬剤名・生活状況などは匿名化して入力する
- ChatGPTの「学習オフ設定」を有効にする(後述)
このルールさえ守れば、ケアマネ業務でChatGPTを活用することに制度上の問題はありません。
実際に使っている場面3選
ここからが本題です。
介護業界18年、現役ケアマネとして私が日々ChatGPTを使っている場面を、具体的なワークフロー込みで3つ紹介します。
① アセスメント・ケアプラン作成の下書き
これが最大の時短効果がある使い方です。
ケアマネなら誰もが経験があると思いますが、訪問から戻って介護ソフトに打ち込んでいる最中に、電話が鳴ったり次の訪問時間になったりで、頭の中で組み立てていた文章が飛んでしまう。
メモを見返して、また一から状況を思い出して書き直し。落ち着いて打ち込める時間を確保するために、結局1時間の残業…。
私が使っているワークフローは少し独特です。単に「アセスメントを書いて」と頼むのではなく、事前準備がポイントになります。
準備段階(初回のみ):
- 空のアセスメントシートをChatGPTに読み込ませる
- 過去に自分が書いた何件かのアセスメント文を読み込ませる
これをやっておくと、ChatGPTが私の文体・表現のクセを学習してくれます。結果として、後から出てくる下書きが「自分が書いた文章」に近いものになり、修正の手間が劇的に減ります。
実際の作業フロー:
- 本人・家族との面談中に、個人情報を書かない形で手書きメモを取る(氏名は書かず、病状や生活状況のキーワードだけ)
- メモをスマホで撮影して画像でアップロード
- 「アセスメントシート用に文字起こしして」と指示
これだけで、コピペで使えるレベルの下書きができあがります。最近のChatGPTは画像の読み取り精度が格段に上がっているので、手書きメモでもほぼ問題なく処理できます。

結果として、利用者1件あたり2時間かかっていた作業が、30分〜1時間に短縮されました。削減率にして50〜75%です。
② サービス担当者会議の議事録・まとめ
2つ目は、サービス担当者会議の議事録作成です。これも①と同じく手書きメモの画像アップロードが役に立ちます。
実際のワークフロー:
- 会議中、個人情報を書かない形で手書きメモを取る
- 会議終了後、メモをスマホで撮影してChatGPTにアップロード
- 「議事録フォーマットに整理して」と指示
これで、議事録作成にかかっていた作業が大幅に短縮されます。録音・文字起こしのような大掛かりな準備も要りません。
以前は、担当者会議が15時に終わっても、事務所に戻り、メモを見ながら会議の様子を思い出し、議事録を仕上げる…。のに30分はかかっていました。抜け漏れがないか確認して、誰が何を言ったかを整理して……。
アセスメントの資料作成同様、議事録を書いている途中に電話がなったり、メモが抜け落ちていると、それだけで思い出すことに時間がかかってしまうんですよね。
今は、会議中のメモを撮影してChatGPTに投げ、出てきた下書きを5分ほど手直しすれば完成します。会議終了から1時間以内に議事録が完了するようになったので、議事録を作るストレスがなくなりました。
この方法の良さは、「メモを取る」という普段の習慣がそのまま活きる点です。特別なツールや手順を覚える必要がないので、続けやすいですよね。
③ 家族への説明文・手紙の作成
3つ目は、利用者のご家族への説明文や手紙の作成です。①②が「時短」の効果だとすれば、こちらは「説明の質向上」の効果が大きい使い方です。
私が使っている場面は以下のようなケースです。
- 利用者の状態を家族に報告する手紙・メール
- サービス内容の変更・追加提案の説明文
- 今後のケア方針についての提案文書
- クレーム気味の対応や、複雑な人間関係が絡む家族への返信文
- 利用者の体調悪化・容態変化の知らせ
- 負担限度額認定証など、制度説明の図解化
特に家族対応で神経を使う場面ほど、ChatGPTの価値を感じます。具体的には次のような使い分けをしています。
- 言い回しや言い換えの案を複数パターン出してもらう
- かしこまった表現から脱して、温かみのある文章に整える
- 「感情を文章にするとどうなるか」を相談する
- 文章の長さやトーンの調整(もっと短く、もっと丁寧に、など)
- 難しい介護用語を、家族がわかる言葉に翻訳する
制度説明は「図解」で理解度が跳ね上がる
特に効果が大きいのが、負担限度額認定証など、制度説明を図解化してもらう使い方です。
文章だけで制度を説明すると、どうしても家族は途中で読むのを諦めてしまいます。そこでChatGPTに「家族向けに図解して」と指示し、出力された図をLINEに画像として添付して送ると、相手の理解度が一気に深まります。
実際の生成プロセスを見てみましょう
ここまでの説明だけだと「本当に簡単にできるの?」と感じる方もいるかもしれません。実際の生成プロセスを見てもらうのが早いです。
ステップ1:プロンプトを入力(音声入力でもOK)

こうした指示は、キーボードで打ち込まなくても大丈夫です。ChatGPTアプリの音声入力を使えば、話しかけるだけで同じ指示が入ります。移動中でもスマホに話しかけるだけで指示できるので、「キーボード入力が面倒」で止まっていた方にこそ試してほしい使い方です。
ステップ2:生成中(「画像を処理しています」と表示される)

ここから画像が出てくるまで、およそ1分。家族への返信文を考えている間に、図解ができあがります。
ステップ3:完成

※2026年4月時点のChatGPT(GPT-5)で生成
完成した画像は、タップすれば画面いっぱいに拡大できます。

ピンチアウトで細かい文字まで確認できるので、ご家族がスマホで受け取っても読みやすい。これをそのままLINEに添付して送れば、制度説明が完了します。

LINEで画像や動画を一緒に送れるようになったことで、「伝わらない」問題が大きく減りました。
感情が関わる場面で大切にしていること
ただし、家族対応でChatGPTを使うときに必ず守っていることがあります。それは「最終的な表現は必ず自分で推敲する」という原則です。
ChatGPTが出す文章は整っていますが、利用者とその家族との関係性は、現場の人間にしかわかりません。AIに全てを任せるのではなく、「ベースを作ってもらって、最後は自分の言葉で仕上げる」。この姿勢が、ケアの質を守る上で大切だと感じています。
使ってみて感じたメリットと限界
ここまでの3場面に共通するメリットを整理すると、次の3つです。
- 時間削減(特にアセスメントは50〜75%短縮)
- 質の底上げ(言葉が出てこない場面でも、叩き台ができる)
- 伝達力の向上(図解や翻訳で、家族の理解度が上がる)
一方で、限界として感じている点もあります。
ChatGPTに任せてはいけないこと
- 利用者の個人情報をそのまま入力すること(必ず匿名化する)
- ケアの判断そのもの(AIはあくまで文章作成のアシスタント)
- 制度の最新情報を鵜呑みにすること(介護保険は頻繁に改正されるため、必ず公式情報で裏取りする)
- 感情のこもった表現の最終仕上げ(家族との関係性は現場の人間にしかわからない)
これらの限界を理解した上で使えば、ChatGPTはケアマネ業務の強力な相棒になります。
介護事業所がChatGPTを導入するなら最初にやる3ステップ
「自分の事業所でも使ってみたい」と感じた経営者・管理者の方に向けて、無料で今日から始められる3ステップをお伝えします。有料ツールも不要、難しい設定も不要です。
ステップ1:ChatGPTの無料アカウントを作り、「学習オフ」設定をする
まずはChatGPT公式サイトで無料アカウントを作成します。Googleアカウントがあれば1分で登録できます。
アカウント作成後、必ず最初にやってほしい設定があります。
- 画面右上のアイコンをクリック
- 「設定」→「データコントロール」を開く
- 「すべてのユーザーのためにモデルを改善する」をオフにする
この設定をオフにすると、入力した内容がChatGPTの学習データに使われなくなります。介護業務で使う前提なら、この設定は必須です。


ステップ2:個人情報の匿名化ルールを決める
事業所として使い始める前に、スタッフ全員で共有する匿名化ルールを1枚にまとめておきます。以下のような形でOKです。
【ChatGPT利用ルール(例)】
- 利用者の氏名は「Aさん」「Bさん」に置き換える
- 年齢は「80代女性」のように年代表記にする
- 住所・家族の名前・電話番号は入力しない
- 病名・薬剤名はそのまま入力してよい(個人特定にはつながらないため)
- 会議メモや面談メモは、個人情報を書かない形でメモを取り、画像でアップロードする
このルールを紙1枚にまとめてスタッフに共有するだけで、情報漏えいリスクを大幅に下げられます。
ステップ3:まずは「議事録まとめ」から試す
最初に取り組む業務としておすすめなのは、サービス担当者会議の議事録まとめです。理由は3つあります。
- 個人情報の匿名化がしやすい(手書きメモを画像で渡すだけ)
- 時短効果が大きく、成果が分かりやすい
- 失敗しても業務への影響が小さい
議事録作成で成功体験を積んでから、アセスメントや家族対応に広げていくのが、無理なく定着させるコツです。
まとめ
ChatGPTは、ルールを決めて使えば、ケアマネ業務の強力な相棒になります。個人情報の匿名化、学習オフ設定、最終チェックの徹底。この3つを守れば、アセスメントは2時間から30分〜1時間に、議事録作成は1時間以上から大幅に短縮できます。
大切なのは、「AIに任せる」のではなく「AIを使いこなす」という姿勢です。現場を知る人間だからこそ、AIの使い方を正しく設計できる。これは18年介護業界にいて強く感じることです。
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